香港行こうぜ!!!

0. はじめに

乃木坂の香港公演に行くか迷っているオタクは、行った方がいいです。行く気が無かったオタクも行きましょう。理由を羅列します。

※前提条件として、筆者は過去の海外単独公演は全通、香港は(ほとんど観光以外の目的ですが)20回くらい行ったことがあります。

 

1. チケットはたぶん余る

海外単独公演のチケットは基本的に余ります。正確に言うとアリーナ席はほぼ埋まりますが、スタンド席はまず埋まりません。

過去一番ひどかったのは上海2019 day1で、スタンド席が半分くらい空いていました。開演直後、後方半分がガラガラのスタンドを見たメンバーの一部は明らかに動揺していました。この日は金曜で、席がそれなりに埋まっていた他の公演(上海2018、台北2019、上海2019 day2、台北2020)は全て土日開催でした。今年の香港公演は魔の金曜開催です。やばい。

公式のお知らせにあった通り、今回はチケット販売サイトが海外対応しているため、普通に日本からチケットを買えます。難しいことは特にありません。英語が苦手ならGoogle翻訳やDeepLを使いましょう。

販売開始から2日くらい経ちましたが、スタンド席のチケットはかなり余っています。(スタンドはシンプルに前の方から席が埋まっていく仕様のため、チケット販売サイトを覗けばその時点で席がどれくらい余っているか大体わかります。)国内のスタジアムやアリーナ系の箱と比べて会場が小さいため、スタンド席からでもステージが見やすいはずです。アリーナ席も一度全部埋まったと思ったらちょくちょく枠が復活しており、まだ間に合いそうです。

「こういうのは現地のファンに行ってもらった方が...」みたいな配慮は不要です。本当に行きたい現地のファンは既にチケットを買っています。あなたが行かないと空席が増え、満員のライブ会場に慣れているあなたの推しメンは動揺して泣いてしまうかもしれません。チケットを買って空席を埋めましょう。

余談ですが、筆者の推しメンである筒井あやめちゃんは香港に来ません。

 

2. 遠征コストは国内と大差無い

国内のライブと比べるとアリーナ席のチケットはちょっとお高めですが、スタンド席は14,000円〜20,000円くらいです。国内のライブも最近チケットが12,000円くらいに値上がりしており、大きな会場で12,000円払ってクソ席を引くよりこちらの方がコスパが良いです。

日本と香港を結ぶフライトは、LCCが複数進出しているため選択肢が多く、首都圏や関西の発着なら往復40,000円くらいから航空券を買えます。札幌や福岡、沖縄に行く航空券代と大差ありません。

また、香港は巨大な国際都市であり、宿泊については超高級ホテルから安宿まで無数の選択肢があります。コストを抑えようと思えばいくらでも抑えられます。(重慶大厦とかは流石にやめておきましょう。)

仮にライブのチケットが20,000円、航空券が40,000円、宿代が2泊で20,000円であれば、遠征コストは食費や雑費を入れても10万円くらいに抑えられるはずです。国内遠征よりちょっと高いくらいでしょうか。つまり、国内遠征ができる人なら香港遠征もできます。香港に行きましょう。

 

3. 海外公演は楽しい

過去の海外公演では、チャイナドレスっぽい衣装を着たり、君の名は希望を中国語で歌ったり、現地ファン向けの演出がありました。今回も何かしら国内ではやらない珍しい演出が見られると思います。

当たり前ですが周りのファンは日本人以外の方が多いです(今回であれば香港以外に大陸や台湾のファンも多く来ると思います)。外国人のファンは、中には頻繁に日本までライブを見に来るような層もいますが、現場慣れしていない人の方が多いです。このため、ライブ中や開演前の盛り上がり方が国内とちょっと違ったりして、まあ面白いです。日本語ができる方も多いため、積極的に話しかければ国際交流も楽しめるでしょう。

人によるとは思いますが、「日本のファンを代表して来た」的な、ちょっとした優越感を心の中で味わうこともできます。(日本語で大騒ぎしたり、偉そうに振る舞うのはやめましょう。)

また、自分はミーグリとか界隈とかよくわかりませんが、「海外まで来てくれた」という事実は、推し被りのオタクと差をつける絶好のチャンスなんだと思います。たぶん。香港で差をつけろ。

蛇足ですが、海外では空港の出待ちも許可されるケースが多いです。細かい説明は端折ります。マナーは守りましょう。

 

4. 香港は楽しい

中国に悪いイメージがあり、香港に行くのも抵抗があるという人は結構いそうですが、少なくとも観光で行く分には香港は良いところです。たしかにここ数年香港ではいろいろありましたが、だからこそ今、香港政府は世界中から観光客を呼び込むことに躍起になっており、乃木坂のライブを楽しむためにわざわざ日本からやってきたあなたに嫌がらせをするほど暇ではありません。安心してください。

香港は飯が美味いし、街歩きが楽しいし、夜景が綺麗だし、見どころが充実しています。シンプルに観光地として優秀です。香港に飽きたらマカオまで足を伸ばすのもアリです。

また、2018年のC3AFA出演、伊藤万理華写真集ロケ、そして阪口珠美写真集ロケと、香港は元々乃木坂と縁が多い土地でもあります。そういった切り口で観光する場所を選ぶのも楽しいでしょう。

ちなみに、香港人は日本人より英語ができます。外国人とのコミュニケーションに慣れているため、英語が通じなくても日本語と身振り手振りでもなんとかなります。

 

5. おわりに

みんな待ってるんで待ち合わせ場所来てください。

乃木坂メンバーのひらがな・カタカナを含む名前の中国語表記について

ちょっとマニアックな話。

 

最近乃木坂のweiboを見ていると、メンバーが中国のファンに日本語を教えたり、逆に中国語で自己紹介をする動画なんかがほぼ毎日アップされている。また、月に一度くらいのペースで生配信もやっており、やはり乃木坂にとって中国は重要なマーケットなんだなあとあらためて感じる。コロナが無ければ今年も10月くらいに上海でライブをやっていたはずで、現地のファンクラブができた今年はなんなら上海の他に広州らへんでもやる予定があったんじゃないかと勝手に妄想している。

昨日はちょっと早めに中秋節をお祝いする生配信があり、かずみん、れんたん、かっきーの3名が出演していた。その中で、「中国語の名前が『チンゴンリン』というメンバーは誰か?」というクイズが出題された。答えは清宮レイちゃんだった。清宮がチンゴンなのは漢字のとおりだが、レイがリンなのは正直かなり違和感がある。

メンバーのひらがな・カタカナの名前をどのように中国語で表記するかは結構前から気になっていた問題なので、あらためて整理してみた。

 

基礎的な知識として、日本人が中国で名を名乗るときは、ローマ字表記で名乗る方法と漢字表記で名乗る方法がある。ふらっと出張で行く分には前者のローマ字表記で問題ないが、留学したり赴任したり、長期滞在で現地のコミュニティーに溶け込む必要がある場合は後者の漢字表記が必須になる。

名前にひらがな・カタカナが含まれる場合、何かしらの漢字をあてがう必要がある。名前の由来がはっきりしているケース(後述する遠藤さくらちゃんのようなケース)では特に問題ないが、名前にいろいろな意味を込めて敢えてひらがなにしているようなケースなんかでは慎重に考える必要が出てくる。

ちなみに、中国には日本人の名前は全部漢字表記という固定観念を持っている人もいて、「パスポートのサイン(ひらがなを含む)と中国語表記の名前(全部漢字)が違う!」なんてことを言われてトラブルになるケースもあるらしく、実は結構切実な問題である。

 

さて、乃木坂のメンバーの場合はどうなっているのか。中国向けファンサイト(公式)から本来ひらがな・カタカナ表記のメンバーの名前を拾ってみた。

乃木坂46中国会员站

念のため乃木恋繁体字版のホームページ(台湾・香港・マカオ向け)も確認したが、簡体字繁体字の違いはあれど全員同じ漢字の表記だったので間違いないだろう。

《【乃木坂46官方】乃木恋~那天在坂道下,我墜入了情網~》 - CLASSMATE

 

まず、違和感が無いケースを4つ挙げる。

 

星野 南(星野 みなみ)
読み:xīngyě nán(シンイェー ナン)
解説:正直、みなみちゃんのことをナンちゃんと呼ぶのは強烈な違和感があるが、漢字表記自体は違和感が無い。ちなみにみなみちゃんは今でも中国向けにはシンイェーみなみと名乗っており、ナンの響きはあまり気に入っていないと思われる。

「みなみ」の由来
まず1つは、親が「タッチ」の南ちゃん(浅倉南)が好きっていうのがあって。あとは……「太陽」というワードがあるんですけど。「南に明るくある太陽」みたいな? なんて言ってたっけなあ……聞いたことはあるんですけど、思い出せなくて。「南」と「太陽」と「明るく」っていうワードは覚えてます。その間がうまくつながらない……でも「明るい子になってほしい」って意味だったと思います。あと、覚えやすいようにひらがなにしたと言ってました。

乃木坂46「夏のFree&Easy」特集 - よくわかる!星野みなみ徹底解剖 (6/8) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

 

渡边 米丽爱(渡辺 みり愛)
読み:dùbiān mǐlìài(ドゥービェン ミーリーアイ)
解説:みり愛の場合、発音に沿った当て字である(後述のクリスティーと同じ)。米も丽(麗の簡体字)も欧米人の名前の漢字表記によく使われている漢字で、違和感は無い。ちなみに、みり愛は2019年の上海・台北海外公演に出ていただが、たしか挨拶ではミーリーアイと名乗っていた。

 

吉田 绫乃克里斯蒂(吉田 綾乃クリスティー
読み:jítián língnǎikèlǐsīdì(ジーティエン リンナイクァーリースーディー)
解説:克里斯蒂とググるアガサ・クリスティーがヒットするので間違いない。ちなみに欧米人の名前は発音に沿って漢字を当てる。例えばトランプは特朗普(トァーランプー)である。

 

远藤 樱(遠藤 さくら)
読み:yuǎnténg yīng(ユェンテン イン)
解説:以前乃木坂工事中で自ら語っていたとおり、コブクロの曲が名前の由来なので全く違和感が無い。ちなみに、さくちゃんはかなり早い段階から(たぶん、去年の上海公演への出演が決まった段階から)ユェンテンインと名乗っている。

名古屋のFMに従事していた遠藤の父は、主に音楽を担当しており、メジャーデビューする前のコブクロに注目してよく流していたらしい。そこでインディーズ時代にリリースした「桜」が遠藤の名前の由来というエピソードを明かした。

乃木坂46 4期生が“自分クイズ”を出題 遠藤さくらの名前の由来はコブクロ「桜」? - Real Sound|リアルサウンド

 

次に、個人的にしっくり来ていないケースを3つ挙げる。

 

和田 真彩(和田 まあや)
読み:hétián zhēncǎi(ホァティエン ジェンツァイ)
解説:まあやの漢字表記といえば(坂本)真綾とか(内田)真礼らへんを先に思い浮かべるが、真彩も変換候補に出てくるので結構メジャーな表記なんだと思う。ただ、なんだろう。真彩と書かれても全く和田まあや感が無い。ちょっとトリッキーな気もするが、発音ベースで漢字を当てても良かった気がする。スタッフはご両親に相談したのだろうか?まあやは海外公演にも来ていたが、直近ではジェンツァイと名乗っていた気がする(うろ覚え)。

 

清宫 玲(清宮 レイ)
読み:qīnggōng líng(チンゴン リン)
解説:率直に言ってチンゴンレイと名乗ってほしい。名前の由来がわからないが、仮に「これだ」という特定の漢字が無ければ、丽(リー;lì)瑞(ruì;ルェイ)あたりの方が良いと思う。とりあえず、スタッフはご両親に相談したのだろうか?

 

筒井 彩萌(筒井 あやめ)
読み:tǒngjǐng cǎiméng(トンジン ツァイモェン)
解説:変換候補に彩萌と出てくるので結構メジャーな表記なんだと思う。ただ、個人的にはどう考えてもトンジンあやめと呼びたいので、強烈な違和感がある。ツァイモェンって誰なんだ?スタッフはご両親に相談したのだろうか?幸いなことに(?)、現時点では本人がツァイモェンと名乗っているのは聞いたことが無い。

 

いろいろと文句も言ってきたが、全て漢字表記にするのは、日本語を読めない人も含めて中国語圏のファン層をもっと拡大していくための前向きな方針転換だと思う。2018年の海外公演では星野みなみ星野みなみで、たぶん星野南の概念はまだ無かった。フルの漢字表記の概念が出てきたのは乃木恋繁体字版の企画が始まったあたりだと思う。その後、しばらくひらがな・カタカナ表記と漢字表記が混在している状態が続いていたが、最近のweiboの投稿を見ていると、9月からフル漢字表記に統一されていることがわかった。

 

f:id:rixiangban46:20200926153704j:image

https://m.weibo.cn/6372196907/4539921953460387

 →8月20日の投稿。表記は「星野みなみ」「筒井あやめ」になっている。

 

f:id:rixiangban46:20200926153827j:image

https://m.weibo.cn/6372196907/4544632991523969

→9月2日の投稿。筒井彩萌になってしまった...

 

f:id:rixiangban46:20200926153719j:image

https://m.weibo.cn/6372196907/4539921953460387

→9月21日の投稿。ついにみなみちゃんまで正式に星野南になってしまった...

 

近い将来、みなみちゃんが自らシンイェーナンと名乗ったり、あやめんが自らトンジンツァイモェン名乗る時代が来るかもしれない。寂しいが、受け入れるしかない。

 

おわり

黒見明香さんが初ブログに載せた中文のお手紙の素晴らしさを伝えたい

0. はじめに

タイトルのとおりだが、黒見さんが初ブログに載せた中文のお手紙がとても素敵だったのでその内容を紹介する。ちょっと長いけど、ぜひ最後まで読んでほしい。

中文というとまず中国語(中国の標準語であり、日本では北京語と言うこともある)をイメージするが、このお手紙は中国語と広東語の二言語で書かれている。ちょっとややこしいが、広東語も中文なのだ。香港の名門大学といえば香港大学と香港中文大学が有名だが、前者は英語メインの教育機関、後者は広東語&中国語メインの教育機関である。

広東語と中国語の違いについては、前回のブログに書いたのでよかったら後で読んでほしい。

rixiangban46.hatenablog.com

 

いきなり話が逸れてしまった。黒見さんのブログの話に戻る。ここでは中文のお手紙の内容しか紹介しないので、まだブログ本文を読んでいない人は先に読んでほしい。写真が可愛い。

blog.nogizaka46.com

 

そして、このブログに載っていた中文のお手紙というのがこれだ。(転載スミマセン)

f:id:rixiangban46:20200502000201j:plain

 

以下、4つのパートに分けて日本語訳をつけて解説する(おじさんが書いているので絵文字っぽいやつは省略する)。ちなみに、自分は中国語はできるが広東語は初心者だ。中国語を基礎に辞書等を使って慎重に翻訳したつもりだが、広東語パートについて何か間違いがあったら指摘してほしい。

 

1. 中国語パートその1(簡体字

原文:

致粉丝们的一封信
大家好 我是乃木坂46的新成员,黑见明香
上初中时,我选了中文课,开始学习中文
我还是一个初学者,但我会努力学习,
希望有一天可以和大家用中文交流
我最想去参观的地方是成都大熊猫繁育研究基地。
非常希望可以见到大家

 

日本語訳:

ファンの皆さまへのお手紙
皆さんこんにちは 私は乃木坂46の新メンバー、黒見明香です
中学校で中国語の授業を選んで中国語の勉強を始めました
私はまだ初心者ですが、頑張って勉強して、
いつか皆さんと中国語で交流できるようになりたいです
私が一番行ってみたい場所は成都パンダ繁育研究基地です。
皆さんにとても会いたいです

教科書どおりの丁寧な中国語で書かれている。成都の具体的な観光地の名前を挙げているのも好感度ポイントが高い。それにしても、中学の授業で中国語の勉強ができるというのはなかなか珍しい。良い学校に通っているのだろう。

 

2. 広東語パート(繁体字

 原文:

我係喺零四年農曆新年嘅時候香港出世,
嗰時啱啱係沙士,大家都非常不安。
但係我周圍嘅人俾咗好多嘢我,
譬如食物、口罩之類嚟幫助我。
所以為咗感激當時幫助過我嘅香港人
我個名入邊就用咗個「香」字。
我唔識講廣東話,只能夠簡單地自我介紹
如果大家有啲咩學習廣東話嘅好方法就請話俾我知啦。

 

日本語訳:

私は2004年の農暦の新年に香港で生まれました。
当時はまだSARSが流行った直後で、みんなとても不安でした。
しかし、私の周りの人たちは食べ物やマスクといったたくさんのものをくれて、私を助けてくれました。
だから、当時私を助けてくれた香港の人たちへの感謝を込めて、私の名前には「香」の字が入っています。
私は広東語を話せず、簡単な自己紹介しかできません
もし皆さんが広東語を勉強する良い方法を知っていたら、私に教えてくださいね。

このお手紙の肝はこの広東語パートだ。香港人が読んだときに好感度が上がるポイントが随所に散りばめられている。

 

・「2004年の農暦の新年に香港で生まれた」

→農暦の新年というのは、いわゆる旧正月だ。香港人を含む中国系の人たちは、西暦の正月以上に旧正月を盛大に祝う。黒見さんはこの時期に生まれたとてもおめでたい子なのだ。

 

・「SARSが流行っている時期に香港で生まれ、香港人にたくさん助けてもらった」

→香港では2003年に流行したSARSで多くの人が亡くなった。今回の新型コロナの対応が早かったのも、当時の苦い経験が関係している。黒見さんは2004年1月生まれなので、この頃SARSはほぼ収束していたはずだが、まだまだ不安が残る時期だったのだろう。黒見さんは香港人が苦しかった時期に香港で生まれ、香港人に愛されながら幼い時期を過ごしたのだ。

 

・「香港の人たちへの感謝を込めて、名前に『香』の字が入っている」

→説明不要である。こんな日本人はめったにいないだろう。

 

・「広東語は話せないので、良い勉強法を教えて」

→香港生まれだけど広東語は話せないと認めつつ、勉強する気があると意思表示したのだ。先日の乃木坂工事中の自己紹介でのミス(知らない人は前回書いたブログを読んでほしい。念のため言っておくと悪いのはスタッフだ。)で、黒見さんに対してちょっと疑問符がついていた香港のオタクも、皆笑顔になってしまうだろう。

 

また、この広東語パートのもう一つの特徴は、口語だ。中国語パートで教科書どおりの丁寧な言葉が使われているのに対して、このパートは軽快な書きぶりなので、香港人が読んだらより親近感が沸くだろう。

黒見さんは広東語が話せないのに、軽快な口語で、しかも黒見さんが香港人から好かれるポイントを随所に散りばめた広東語の自己紹介文が書かれている。これは、黒見さんの周りに黒見さんのことをよく理解している広東語話者のお知り合い(たぶん香港人)がいるということだろう。良い人の周りには良い人が集まる。

 

3. 中国語パートその2(簡体字

原文:

非常感谢大家阅读我的博客,
我衷心希望大家可以安全和健康,
希望让人感到安心与幸福的日子早日到来!!

 

日本語訳:
皆さん、私のブログを読んでいただき本当にありがとうございます。
皆さんの安全と健康を心から願っています。
安心や幸せが感じられる日々が早く訪れることを願っています!!
 

 今般の社会情勢を反映した素晴らしい締めの言葉である。また海外公演ができるようになったら、黒見さんも行ってほしい。

 

4. 最後の「ありがとう」

谢谢!
多謝!

黒見さんの自画像(可愛い)から吹き出しが二つ出ていて、どちらも「ありがとう」と言っている。上は簡体字で、中国語読みは日本人もだいたい知っている「しぇーしぇー」、下は繁体字で、広東語の発音は「どーぜ」だ。どちらも意味はだいたい同じだが、「多謝」は広東語でよりよく使われる表現なのだ。最後の最後まで中国語と広東語を使い分けていろんな人に配慮している。この子は本当に16歳なのだろうか。

ちなみに台湾でも「しぇーしぇー」ではなく「多謝」と言うと現地の人に喜ばれる。ただ、こちらは台湾の方言なので発音は「どーしゃー」になる。

 

5. おわりに

黒見さんは16歳だが、倍くらい生きてる自分なんかよりよっぽどしっかりしている。

今後の活躍がとても楽しみだ。

 

応援しましょう。

 

おわり

なぜ乃木坂46に関わる人は中国語と広東語を混同してはいけないのか

1. 何があったか

ちょっと前に放送された乃木坂工事中でこんな出来事があった。新4期生が初登場して、一人ずつ自己紹介したり、特技を披露する回だった。黒見明香さんの番で、香港生まれで広東語を話せるという簡単な紹介の後に、彼女は外国語で自己紹介をした。しかし、彼女が話した言葉は広東語ではなく中国語(日本では北京語と言うこともある、中国の標準語)であった。

ほとんどの視聴者からすると中国語と広東語の区別なんてどうでも良いことだろうし、外国語であれだけ自己紹介できるのがすごいことに変わりはない。黒見さんの中国語は結構流暢だった(比較するものじゃないが、発音は山﨑さんより良い)。しかし、このように中国語と広東語を混同して間違ったことを発信すると、少なからず不快な思いをする人が出てくる。それすらどうでも良いと感じる人もいるかもしれないが、最後に損をするのは乃木坂であり、黒見さん本人だから、もう同じミスをしてほしくない。

また、念のため言っておくが、16歳の黒見さん本人は何も悪くない。この件について反省すべきは周りの大人の無知だ。

前置きが長くなったが、以下、なぜ広東語と中国語を混同してはいけないのか簡単に解説する。一言でいうと、香港人に嫌われるからだ。先に断っておくが、自分は香港人でも中国人でもないし、これはあくまで自分が思う一般論である。

 

2. 香港人母語

ほとんどの香港人母語は広東語であり、中国語ではない。広東語は文字通り中国の広東省(香港と隣接している)を中心に話されている言語であり、世界中に広く散らばる華僑・華人社会でも話されている。特に多いのはマレーシア・シンガポールあたりだろうか。近年、中国の経済発展の影響で中国語を話せる香港人も増えているが、彼らの母語はほとんどの場合あくまで広東語だ(一応、中国語や英語を母語とする人も一定数存在する)。

広東語と中国語はかなり違う。ややこしい話だが、文字に起こすと同じ部分も多い(繁体字簡体字の違いもあるが、今回は説明を省く)。しかし、発音が全くと言っていいほど違うため、広東語しか話せない人と中国語しか話せない人は文字に起こさないとコミュニケーションが取れない。例えば、「日本人」の発音は広東語だと「やっぷんやん」、中国語だと「るーべんれん」だ。全然違う。

 

3. 香港人アイデンティティ

1997年の英国からの返還以降、香港は間違いなく中国の一部だ。しかし、香港は「香港省」ではなく「香港特別行政区」であり、2047年までは一国二制度の下で独自の三権が認められている(詳しいことはWikipediaとかを読んでほしい)。香港はアジアの一大金融センターであり、英国統治時代から続く魅力的な独自の文化を持っている。こういった背景から、多くの香港人(特に若者)は、「自分は香港人だ」という強いアイデンティティを持っている(「〇〇人ではなく」という部分は敢えて省略する)。そのうえ、ここ数年はいろいろあってこの傾向が非常に強くなっている(詳しく知りたい人はGoogleで「香港 デモ」とか検索してほしい)。

 

4. 広東語と中国語を混同されることが、香港人にとって何を意味するのか

香港人にとって中国語を学ぶことは、1997年の返還以降、香港の中国化の一環とも言える。上でも少し触れたが、中国本土の目まぐるしい経済発展の影響で、中国語を学ぶ香港人の数は確実に増えている。筆者の経験を話すと、2000年代前半に香港を訪れた際は洋服屋の店員さんに中国語を話してもほとんど通じなかったが、2000年代後半あたりからは街中でも普通に通じるようになった。

それでも、上で詳しく説明したとおり、彼らの母語はあくまで広東語である。外国人に「香港生まれだから、広東語を話せます」と言われたら、香港人は喜ぶ。中国語と違って、ビジネスで使用することが少ない広東語をわざわざ学ぼうとする外国人は非常に珍しいからだ。そんな期待をした後に、結局メジャー言語の中国語で話されたら、彼らがどう感じるかは容易に想像できる。広東語と中国語の区別がついていないということは、彼らのアイデンティティを理解していないということであり、リスペクトを欠くことだ。

 

5. 終わりに

ダラダラと書いてきたが、やはり正直中国や香港と関わりが無い人からすれば「そんな細かいこと知らんよ」の一言で片づけられても仕方のない話だと思う。しかし、乃木坂46は2年連続で上海と台北でライブをしており、中国人向けのファンクラブまで持っている。香港でも2年前にミニライブをしている。今や中国語圏の至る場所にたくさんのファンを抱えているワールドワイドなグループだ。その乃木坂46が、こんなところで無知を晒して損をしてほしくない。

実は、番組が放送された後に乃木坂46のスタッフはTwitterの投稿で全く同じミスをしている。「#広東語と英語話せます」とあるが、広東語は話せないはずだ。

このツイートのリプ欄を見ると、結構な数の人がツッコミを入れている。その中には明らかに怒っている人も含まれる。たぶん香港人だろう。

黒見さんは中国語が話せる。英語も話せるらしい。こんなに素晴らしい特技はない。周りの大人がきちんとフォローして、グループの活動にも活かしてほしい。

 

おわり